事業の背景
長野県の小・中学校における不登校児童生徒数は、令和4年では5,735人(1,028人増)、高等学校では949人(162人増)とおり、10年連続で増加している。また、発達障がいを抱える児童生徒の数も多く、二次障害としての不登校も考えられている。
また、出口問題もあり、長野県の通信制高校の卒業生の3人に一人は無業者であると報告されている。通信制のみならず、他の高校においても同様の問題を抱えているものと推測される。さらに離職率においても大きな課題を抱えていると言わざるをえない。
本校では、不登校生の在籍率は令和2年度には68%、令和3年度には50%、令和4年度には57%、令和5年度には56%、令和6年度入学生では54%となっている。令和5年度の支援が必要な生徒(発達障がい等)は3年生で見ると、精神手帳・療育手帳を持つ生徒が10.4%、発達障がい診断ありの生徒が48.8%、精神系服薬生徒が28.6%と高い比率になっている。本校における教育の実際を課題も含め、家庭・地域に公表しその意見を求める活動を通して、具体的に取り組まなければならない課題や成果も見えてきている。
本校への入学者のうち不登校経験者は平均すると57%であるが、本校での学びや生活を通じて3年次では近年1割までに改善してきている。この要因としては、中学校からスムーズに通える体制づくり、マナー講座、SST・LST導入、外部講師による講座開設、さらに教育相談チームとしての相談体制の整備、校外学習を増やす試みなどを行い、様々な支援機関や企業との産学連携を模索してきた、その結果が不登校の改善率の向上につながっていると考えられる。
しかし、産学連携だけでなく、産学官の連携によってさらに、充実した取り組みができるのと考えられる。企業との連携は進めているが、さらに積極的に企業との連携を深めるために、本校の教育方針に同意いただける企業との情報交換や授業参観及び意見交換等の機会を多く設定していくことが有効であると予想できる。長野県ではフリースクールの認証制度が始まるが、フリースクールの質の確保が重要と考えている。子どもたちの「自主性」を尊重しながら、質の確保をどう行うかについて、本校は「学校らしさ」と「学校らしくなさ」を兼ね備えており、今後の不登校の子どもたちにとっての一つのモデルとしてのあり方をさらに検討し深めていくことが必要とされている。しかし、長野県における高等専修学校の認知度は低く、本校において自分らしく生活できつつある現状を多くの生徒の皆様や保護者及び学校や行政関係者に認知していただくために、県の行政と連携した取り組みができることが必要と考えられる。また、卒業後の出口指導の充実と離職率の低減はさらに今後重点的に改善する必要があると認識しており、長野県産業労働部及び企業との連携を密にして、企業の方、本校生徒、他校生も含めて、最近の就職状況や企業が求める人材について意見交換の機会を持ち、就職に係わる情報量を増やすこと、及び事前に多くの企業をよく理解すること、逆に企業の方に本校の生徒の特性を理解していただき、適切なマッチングの状況を設定していくことが必要である。
長野県産業労働部の協力及び企業の人事を総合的に扱っている企業との連携において、多くの企業の方に本校の合同教室でブースを開設いただき、生徒が色々なブースにおいて、企業の特色・仕事内容などを聞く機会を設定したいと構想している。このことにより、企業についての情報量を増やすとともに、マッチングの機会を多くし、就労意欲の喚起や離職率の低下の解決に資するものと思われる。魅力ある企業の企業人に本校の「総合の時間」に講師として参加いただき、企業人としての想いや失敗談及び企業としての特色・魅力等について話をしていただける機会を設定することにより、地元企業の魅力を知り、地元に定着する人材の育成に資するものと考えている。不登校傾向の生徒に対しては、上記内容をメタバース空間を利用して提供し、学校に来れない生徒にとっても十分な情報の提供につなげることができるモデルを開発し、不登校の改善と共に、多くの企業情報を入手することができる状況を設定することにより、改善が図れるものと考えられる。
【現状と課題】
行政自体が、高等専修学校について認識不足の点が多い。本校と行政の関わりをもち、広く不登校問題について話し合う場を設定する。
【改善ための取り組み】
次世代サポート課、県民の学び支援課にはたらきかけ、不登校問題について話し合う機会(協議会)を設定する。多様な生徒を受け入れている立場の方に向けて、本校が現在行っている指導内容を提示し協議を行う。
【現状と課題】
中学における認知度調査はしてきているが、企業における認知度調査はされていない。
【改善のための取り組み】
株式会社戦略デザインラボを通して、地元企業への本校に関する認知度を把握する。また、企業が求める人材についても調査を行う。
【現状と課題】
本校に対して地元企業に関心を持ってもらう必要性がある
【改善のための取り組み】
認知度調査をもとに、地元企業の方に本校の授業を参観いただき、生徒の授業への取り組みをみての感想をいただきまとめる。
本校ホームページを見ての感想を聞く。(ホームページからの情報発信の可能性)
本校公式インスタグラムを通して、本校の活動内容の充実をはかる。
【現状と課題】
生徒の職業についての意識と理解不足が認められるため、企業に対する知識は曖昧な点が多い、その改善のために、地元の優れた企業を知る。
【改善のための取り組み】
地域にある優れた企業について知る機会をもつために、企業経営者の方に来校いただき、総合的な学習の時間を使って話を聞く、質疑応答の時間も設定し、地元企業の素晴らしさに気づく機会をもつ。
【現状と課題】
本校の生徒・学生の素晴らしい点が多くの方に知られていない。発表の場の設定が不十分。
【改善のための取り組み】
発表の場を設定し、美術・服飾等の作品を展示できる仮想空間(メタバース空間)を使用し、発表を行う。情報コースの生徒等メタバースに関心のある生徒にはメタバース制作についても機会を設定する。
【現状と課題】
不登校の生徒に対する手立てとして、多様な取り組みを行っているが、現状では積極的手段がない。
【改善のための取り組み】
メタバースの多様な利用方法を検討し、対応可能なメタバースを用いた不登校改善に向けての手立てを検討し不登校改善実績を数値で表す。